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白菜を凍らせると…

まず初めに謝ります。

白菜農家の皆様、大変申し訳ございません。

大学生2回生に上がった春、人生初の一人暮らしを始めました。

 

というのも、私が通っていた大学は実家から片道1時間30分の距離にあり、1回生で通学のエネルギーを使い果たしたからです。

 

生活費をアルバイトして稼ぐ事を条件に、親から一人暮らしの許可を得ました。

 

ですので私の大学生活の半分はアルバイトが占めており、参考書以上に預金通帳を眺める毎日でした。

 

社会人になる前に、お金の有り難みを学ぶ良い期間となりました。

 

節約の為、男の一人暮らしには珍しく基本的に3食自炊をしていました。

 

しかし、何せ初めての一人暮らし。たくさんの失敗を経験しました。

 

まず、スーパーで何を何個買えばいいのかわかりません。

 

自分が1日でどれくらい食べるのか、料理を作るのに何の食材が必要なのか、そもそも冷蔵庫の容量はどれくらいか、何もかも手探りです。

 

初めのうちは、買い過ぎて食材を余らせる事が多くありました。

 

そんなある日、白菜が大安売りされていて貧乏性の私は買い過ぎてしまいました。

 

案の定食べきれず、凍らせれば何でも長期間保存できると考え、白菜を冷凍庫に入れました。

 

そして後日、白菜を解凍する為に冷凍庫から冷蔵庫にリターンさせました。

 

その日の夕方帰宅すると、嗅いだことがない異臭が部屋に充満しています。

 

おかしいと思い発生源を嗅ぎ回っていると、冷蔵庫の前で足の裏がビシャビシャに濡れました。

 

身に覚えのない液体に驚き、19歳の男が情けなく小さな悲鳴を上げます。

 

落ち着きを取り戻した頃、異臭の正体はその液体であることに気が付きます。

 

しかし何の液体か理解できず、次は液体の発生源を探し何気なく冷蔵庫を開けました。

 

すると、解凍中の白菜があったはずの場所に小さな緑色の物体が力無く倒れており、その周りが水浸しになっています。

 

じっくりと観察し、一つの結論に至ります。

 

(白菜だったものから液体が出て縮んだんだ!)



さて、結論は出ましたが文系の私にはその理由が全く理解できませんでした。

 

原因を追求する為、同じ大学で理系の学部に通うサークル仲間に一連の白菜騒動を報告しました。

 

呆れ切った顔をした後、頭を抱えながら子供に話すように説明が始まりました。

 

まず、液体は凍らせると体積が増えます。

 

そして白菜はほとんどが水分で、葉の部分は非常に柔らかく脆い植物です。

 

そんな白菜を凍らせる事により、体積の増えた水分が葉を突き破り、解凍と共に一気に臭い液体が流れ出したとのこと。

 

「なるほど!だから冷凍野菜はコーンや枝豆のような硬い野菜なのか!」と感動しましたが、友人は表情筋を家に忘れてきたような顔をしていました。

 

非常に勿体無い事をしてしまいましたが、それ以降の人生は上手く白菜と付き合って生きています。

 

いつか、品種改良が進んで凍っても液体が漏れない白菜が誕生する日まで、皆様も気をつけてください。